彼はまっすぐ私を見て言った。
「美しい」
「乱視入ってます?視力弱いならメガネかけたほうがいいですよ」
「僕は裸眼で1.5です。乱視もありません」
「審美眼か……矯正に時間がかかりそうだ」
「醜美の判断はこれまでそれなりに学んできたつもりです。高校の時美大行こうか本気で考えたくらいには」
ならこれに対してはどうだろうか。
私は彼の手を引いて坂をのぼっていく。
「これはどう?」
私は振り返って聞いた。
彼は目を見開いて
「僕にはまだ見たことの無いものがたくさんあったみたいです」
としか言わなかった。