人生のプロローグ
「私は最高に性格が悪いから君に1冊の本をあげよう」
彼女はそう言って本を投げてよこした。
綺麗な放物線を描き、見事に開いた状態で顔に覆いかぶさった。寝転んでいた僕が悪いのだけど。
「なにこれ?」
「よく分からん啓発本ばっか読んでないでたまには物語に頭を突っ込んでみたらいい」
彼女は自信満々に見下ろしてくる。残念ながらパンツスタイル。スカートなら丸見えだったのに。
「小説とか読まないのしってるだろう?」
「そんなこと知らない。本なら何でも変わらないじゃん」
「なら自己啓発本だって」
「それはそれ、これはこれ」
食い気味に打ち消された。
「わかった、あとでな」
「今読め!」
彼女はそう言って立ち去っていった。
その本の主人公はまさに僕そのもので面倒な生活はやめてもいいんじゃないかと言わんばかりのものだった。
僕と彼女は付き合ってるわけじゃない。かといってお互いを嫌いなわけじゃない。でもこれ以上のことは話さないでおいた方がいい気がする。この先の話はきっと君の話だよ。